2006年09月18日

李登輝氏の講演原稿D

前回のエントリーの続きです。

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日本の教育と私 −−−李登輝 D

    −誠意ある実践こそ日本精神−

武士道とはかつて日本人の道徳体系でした。封建時代には武士が守るべきことを要求されたもの、もしくは教えられたものです。

それは成文法ではない、精々、口伝による、もしくは数人の武士、もしくは学者の筆によって伝えられた僅かの格言があるに過ぎず、むしろそれは語られず、書かれざる掟、心の肉碑に録されたる律法たつことが多いのです。不言不文であるだけ、実行によって一層強い効力が認められているのです。

それはいかに有能なりといえども1人の人の頭脳の創造ではなく、またいかに著名なりといえども1人の人物の生涯に基礎するものではなく、数十年、数百年にわたる武士の生活の有機的発達でありました。それがやがては日本人の行動基準となり、生きるための哲学にもなりました。

具体的には、武士道精神は公の心・秩序・名誉・勇気・いさぎよさ・惻隠の情・躬行(きゅうこう)実践を内容にしつつ、日本人の精神として生活の中に深く浸透していったのです。

日本精神について、台湾嘉南大圳、烏山頭水庫(ダム)を建設した八田與一氏を例として述べましょう。

嘉南大圳の灌漑面積は15万ヘクタール、烏山頭ダムの水源建設総工事費は400万円、当時の台湾総督府の年間予算に匹敵する大工事でした。工事期間は10年、32歳の若さでこの巨大工事を成し遂げた八田氏は、この工事でソーシャルジャスティスを実践、日本人精神を発揮しました。

烏山頭ダムと濁水渓から取り入れた水は合計1億5000万トン。しかし、これでは15万ヘクタール全域に給水することは不可能でした。

八田氏は普通の土木工事の技術者と違い、『ダムと水路を完成すればそれで終わりである!』とは考えませんでした。彼は農民のためにダムや水路を造るのであれば、何とかして農民にあまねく水の恩恵を与え、生産が共に増え、生活の向上があって初めて工事の成功であると考えました。彼はこのために、三年輪作という耕作方法を考え、水をすべての農民に行きわたる方法を講じました。

嘉南大圳の工事で134人もの人が犠牲となりました。完成後に殉工碑が立てられ、その碑には全員の名前が台湾人、日本人の区別なく刻まれていました。

関東大震災の影響で予算が大幅に削られ、従業員を退職させる必要に迫られたことがありました。その時、八田氏は幹部の『優秀な者を退職させると工事に支障が出るので、退職させないでほしい』という言い分に対し、『大きな工事は優秀な少数の者より、平凡な多数の者が仕事をなす。優秀な者は再就職が簡単にできるが、そうではない者は失業してしまい、生活できなくなるのではないか!』といって、優秀な者から解雇していきます。

八田夫婦が今も台湾の人々によって尊敬されるのは、義を重んじ、誠をもって率先垂範、実践躬行する日本的精神が脈々と存在しているからです。八田夫婦の例を挙げて、私がここで皆さんに申し上げたい事は、日本精神の良さは、口先だけではなく、実際に行う、誠実をもって行うというところにこそあるのだということです。

(2006年9月18日付 産経新聞)
posted by ippei_kagurazaka at 22:35| Comment(1) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
『北朝鮮と台湾の関係』 核廃棄物

核開発などで何かと話題に上る北朝鮮と台湾の以外な関係をまとめてみましたので
ご参考まで。

 http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/2004/00241/contents/500.htm

 http://72.14.203.104/search?q=cache:Dgo-61n9W8sJ:nippon.zaidan.info/seikabutsu/2004/00241/contents/500.htm+%E6%A0%B8%E5%BB%83%E6%A3%84%E7%89%A9%E3%80%80%E5%8F%B0%E6%B9%BE%E3%80%80%E6%9D%8E%E7%99%BB%E8%BC%9D&hl=ja&gl=jp&ct=clnk&cd=2
 
  日本財団 図書館
  1997/06/10 世界週報

  必ずしも足並みがそろわぬ米側の対応

  加えて、四月一二日、李登輝総統は、イギリスの賓客との会見の中で、
  北朝鮮問題とそれに関する台湾の対応策に言及したといわれる。
  だが、かねてから話題となっていた台湾の核廃棄物を北朝鮮で処理する問題については、
  既述のギングリッチ米下院議長ですら李登輝総統との会見で抑制を促したもようである。

 http://ritouki-aichi.sblo.jp/article/31540733.html?reload=2009-08-27T15:15:16
  愛知李登輝友の会ブログ
   2009年08月23日
    のコメント欄をご覧ください
Posted by おなか一杯 at 2009年09月17日 01:43
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