2006年03月27日

もう少し考えてはどうか〜小学校での英語必修化(中教審の提言)〜

小5から英語を必修化 中教審部会が提言

小学生に英語を学ばせるかどうかについて検討してきた中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の外国語専門部会は27日、5年生から週1時間程度を必修化する必要がある、との提言をまとめた。社会のグローバル化の進展に加え、すでに小学校でゲームや歌などを通じて英語に触れる「英語活動」が9割以上の公立小学校で実施されている実情を踏まえた。

同部会は31日に、この提言を上部機関である教育課程部会に報告する。ただ、中教審全体では、小学校から英語を教えることについて、「他の教科をしっかりやった方がいい」「国語の習得が先ではないか」などの異論を唱える委員もいる。文科省は、中教審での今後の議論や世論の動向を踏まえ、実際に導入するかについて検討する方針だ。導入する場合には、現在改訂作業を続けている学習指導要領の実施時期に合わせる案が有力で、移行期間を含めて4〜5年先になる見通しだ。

文科省の調査では、公立小の6年生は現在、平均して年間13.7単位時間(月に1〜2回)の「英語活動」を実施。主に「総合的な学習の時間」を利用している。

こうした実態を踏まえ、専門部会は「高学年は、中学校との円滑な接続を図る観点から、年間35時間(週1回)程度で共通の教育内容を設定することを検討する必要がある」と提言した。

この際、「教科」にすると、通知表で3段階の数値評定を行う必要があるなど、学校現場に混乱を招くおそれがある。そこで、道徳などと同じ「領域」か、「総合的な学習の時間」の中に位置づけるべきだとした。

また、指導者については、当面は学級担任と原則ネイティブスピーカーの外国語指導助手(ALT)とを組み合わせることが適当だとした。このため、4年生以下まで実施対象を広げると、ALTの確保など、教育条件の整備の課題などもあるため、「引き続き検討」という表現にとどめた。

(2006年03月27日 朝日新聞)




中教審は我が国の教育においてどんなビジョンを持っているのだろうか。すでに英語教育が広く小学校で行われているという報道があるが,せいぜい英語に親しむ程度のものである。こんなことやるよりも日本語が先だと私は強く思うのだが・・・


「子供の理科離れ」が問題視されて久しいが,私が現場で実感したことは,理科離れは子供ではなくて「親」だということ。サイエンスに対して,難しいとか,とっかかりにくいとか,勝手に壁を作っていたのはまさに大人たちの持つ「先入観」がもたらす「偏見」なのだ。今回の英語必修化にしても,恐らく英語に対して何らかの壁を感じている多くの大人たちの存在がその背景にあるのだろう。

だからというわけではないだろうが,「国際的なコミュニケーション能力の育成」という課題に対して,小学校での英語必修化というのはあまりに安易な発想である。

もう少しよく考えてはどうか。

ただでさえ数年前に学習量を削減し,週休二日を維持しつつ,週1日で英語を必修にしようというのである。

中途半端な英語必修化よりも,小学生なら読み・書き・計算など他にもっとやらなければならないことがたくさんあるはずである。

改善しなければならないのは中学校以降の英語教育と,大人たちが持つ英語に対する「偏見」ではないのか。



ところで,時々話題になることだが,最近の大学生たちの文章力の低さには目を覆ってしまうことがある。文才という観点では私は決して人のことを言える立場ではない。私も学生の頃は日本語にならぬ文章で,当時指導してくださった先生方の手をずいぶんと煩わせたものだ。


先日,中国からの留学生であるAさんから日本語の文章の添削を頼まれた。最初に持って来た文章は日本語として滅茶苦茶だった。まぁそれはある意味仕方のないことで,我々が初めて英語を書くのと同じである。私がいつも校正を依頼しているネイティブの方も同じように思っているかもしれない。添削を繰り返し,文書を何度も往復してようやく体裁の整った良い文章が出来上がった。

私がAさんに大変感心したのは,添削のたびに,こんな言い回しがある,この場面ではこういう日本語を使う,といったことをもれなく吸収しようとする熱心な姿勢であった。

数年前に来日した当初は日本語など全く話すことができず,特に日本人学生との意思の疎通がうまくいかずに悩んでいたものだが,現在は生活に支障がないほどまでに会話が上達した。それもこれも努力があってのことだろう。Aさんとのこうしたやり取りは,私に色々なことを考えさせてくれた。


最近アメリカから度々面白いメールがやってくる。スパムなのかどうかは知らないが,母国語として英語を話す大学院生が私の書く英文を添削してくれるというのだ。どうやらそれをアルバイトにしているらしい。そこでふと思ったのである。ネイティブの日本語スピーカーとしての日本人学生が,留学生の書いた文章を添削できるだろうか。ある大学院生を捕まえて聞いてみたところ,「とても無理だ」という答えが返ってきた。即答とは何とも嘆かわしい話である。


「言葉の限界は思考の限界」というように,文章力,語彙力は思考能力そのものを左右する。ネイティブの日本語スピーカーならば英語で表現しようとする前にまず日本語で考えるだろう。私はそこを強調したいのである。



今朝の産経抄の「いい年になった」筆者も考えさせられたようだが,教育界こそもう少し考えるべきであろう。


(2006年3月27日付 産経抄)

中国人詩人の田原氏と話をする機会があった。一九六五年の生まれとまだ若いが、仙台を拠点にすでに日本在住十五年、日本語で詩も書く。『谷川俊太郎詩選』を中国語に翻訳、それが出版され中国文学界に谷川詩ブームを起こした仕掛け人でもある。

▼谷川さんの「襤褸」という詩の冒頭はこんなふうに訳される。「詩歌/在天亮之前/誕生」(夜明け前に/詩が/来た)。ひらがなまじりの日本現代詩と漢字だけの中国詩はまったくリズムが違うのに、朗読すると同じ時間的空間的な感覚が広がってくる。

▼二つの言語の違いについての理解と愛着のなせるわざだろう。「垂直に落下する梅の香りは梅雨に濡れない…」(『梅雨』より)。田氏のつくる日本語詩も助詞が生み出すリズムが美しい。

▼「現代詩といえば毛沢東賛歌しか書けなかった時代も長かった」という中国で、平易だが深く美しい谷川詩への反響は大きかったそうだ。「現代中国詩発展のための重要な参考」と詩的な表現ではないが絶賛されて昨年、その訳詩選集が中国で出版された優れた東アジア文学に与えられる「二十一世紀鼎鈞双年文学賞特別賞」を受賞した。

▼筆者が生まれて初めて出合った現代詩は、やはり谷川詩だった。「かっぱらっぱかっぱらった…」。ぼろぼろになるまで繰り返し読んだ名作絵本詩集『ことばあそびうた』は、日本語のもつ妙、リズム、面白さを幼心に刷り込んだ。

▼それなのに…と、いい年になったいま考えさせられる。大量の外来語や安易な略語、流行語にさらされているうち、自分もまたぞんざいな日本語を使うことに無感覚になってはいまいか。美しい日本語への愛着を示してくれた外国人と別れたあと、古い詩集を引っ張り出した。
posted by ippei_kagurazaka at 23:07| Comment(2) | TrackBack(12) | 教育 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
初めまして こんにちは
新5年生の娘と幼稚園生がいる普通の主婦です。 英語導入絶対反対派です。TBさせていただきました。

自分の小学校時代としか比べられませんが ”こんなんで大丈夫なの?”と不安になる事ばかりです。 

文章力といえばやはり作文だと思いますが 作文をまだまともに書いた事がありません。 もちろんそれと似たことはしています。コメント欄が四角く囲まれているとか数行分の腺が引いてあるとか。 でも、作文用紙というものは使った事ありません。当然 長文など書いた事ありません。

算数にしても理科にしても”こんなんでいいの”と思うことだらけなのに 尚英語? とんでもありません!

もしかしたら 今後授業時数が増えるのかもしれませんが(2/15の中教審の審議経過報告について を読ませていただきました。わかりやすくまとめて下さりありがとうございます) 週5日制は維持するとのこと。

これ以上 小学生に苦難を与えないで下さいと お願いしたいです。社会に出た時、ゆとり教育の娘達の年代が 心配です。
Posted by おりょう at 2006年03月29日 20:52
はじめまして。コメントとTBありがとうございました。
レスが遅れて申し訳ございません。

さて,文章力について。すでにいろいろなところで言われておりますが,これは読書量と密接に関係していると思います。どうも学生たちを見ていると,作文が苦手だという人のほとんどは本や新聞をこまめに読むという習慣を持たないようです。

逆に,文章が良く書ける人に聞くと,読書が好きと答える場合が多いように感じます。

できるだけ活字に慣れ親しむよう,私は自分の研究室には専門書のほかにもいろいろな本を置いていますが,見えるところにあれば,活字が苦手だという人でも手にとって読み始めるものなんですね。

>算数にしても理科にしても”こんなんでいいの”と思うことだらけなのに 尚英語? とんでもありません!

おっしゃるとおりです。

ところで拙ブログの2月15日付の記事で,週5日制というところを間違って週休5日制と書いてました。週休5日だったら大変なことになりますね。
(訂正いたしました。)
Posted by ippei_kagurazaka at 2006年03月31日 17:49
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