2006年03月25日

原子力発電所の地震対策は十分か

今日は私たちの生活に直結する一つの重要なニュースがあったので留めておく。


志賀原発の運転差し止め命じる 金沢地裁判決

石川県志賀町の北陸電力志賀原発2号機(改良型沸騰水型炉=ABWR、出力135万8000キロワット)をめぐり、16都府県の132人が、同社(本店・富山市)を相手取り、運転差し止めを求めた民事訴訟の判決が24日、金沢地裁であった。井戸謙一裁判長は「電力会社の想定を超えた地震動によって原発事故が起こり、住民が被曝(ひばく)をする具体的可能性がある」として巨大地震による事故発生の危険性を認め、住民側の請求通り北陸電力に対して志賀原発2号機の運転を差し止める判決を言い渡した。2号機は今月15日に国内55基目の商業用原発として営業運転を始めたばかりだった。北陸電力は控訴する。

営業運転中の原子炉の運転差し止めや原子炉設置許可の取り消しを求めた訴訟で、原告の訴えが認められたのは初めて。判決の内容を即座に実行できる仮執行宣言はついておらず、判決が確定しない限り、実際に運転が止まることはない。

井戸裁判長は判決で、志賀原発2号機の敷地で起きる地震の危険性と耐震設計について検討。耐震設計が妥当といえるためには、運転中に大規模な活動をしうる震源の地震断層をもれなく把握していることと、直下地震の想定が十分であることが必要だと述べた。

その上で、国の地震調査委員会が原発近くの邑知潟(おうちがた)断層帯について「全体が一区間として活動すればマグニチュード7.6程度の地震が起きる可能性がある」と指摘したことを挙げ、「電力会社が想定したマグニチュード6.5を超える地震動が原子炉の敷地で発生する具体的な可能性があるというべきだ」と述べた。

巨大地震が発生した際の被害については「許容限度を超える放射性物質が放出され、周辺住民の生命、身体、健康に与える影響は極めて深刻である」として、最悪の場合、最も遠方である約700キロ先の熊本県に住む原告であっても許容限度をはるかに超える被曝の恐れがあると指摘。住民の健康が侵される具体的な危険は受忍限度を超えると結論づけた。

さらに判決は、国の定めた耐震設計審査指針についても、前提となる計算方法が古くなり実際の観測結果と食い違う例があることなどを挙げ、「合理性に疑問を抱かざるを得ない」と述べた。

ABWRの危険性については「原告の立証が不十分である」などとして認めなかった。

原告側は、東北電力女川(おながわ)原発(宮城県女川町、石巻市)で、昨年8月の宮城県沖地震が設計の範囲内の規模だったのに、敷地内の一部で限界を超す揺れを記録した――などと指摘。「20年以上前の耐震設計審査指針は時代遅れで、地震を過小評価している。2号機を含む日本の原発は現実の地震に耐えられない」と主張した。

これに対し北電側は、邑知潟断層帯には活動度の低い断層もあり、一連のものとして評価する必要はなく、仮に調査委の評価通りの地震が起きたとしても、原発の揺れは限界を下回る▽女川原発の1〜3号機は設計通り自動停止しており、環境への放射能の影響はない。設備の健全性も損なわれていない――などと反論。宮城県沖地震の発生が志賀原発の耐震安全性に影響を与えるものではないとしていた。
(朝日新聞 2006年3月24日付)



「地震国なら危険性同じ」 原発差し止め判決で道内関係者から声

国内で初めて原子力発電所の運転差し止めを認める判決が金沢地裁であった二十四日、泊原発を抱える道内でも関係者からさまざまな声が上がった。

北電によると、泊原発は従来の加圧水型軽水炉で、改良型沸騰水型炉の志賀原発2号機とは異なり、出力規模も小さい。判決の焦点となった耐震性について、北電は「泊発電所は活断層の上に造らないなど国の安全指針を満たしており、問題ない」とした。最大でマグニチュード(M)7・8の地震を想定している。

ただし、「国が進める指針の見直しの動きに合わせて適切に対応していく」とコメントした。

道立地質研究所表層地質課の大津直(すなお)課長によると、泊原発に最も近い活断層は寿都、黒松内、長万部に展開する「黒松内低地断層帯」で最大M7・3の地震が想定されている。

ただ、活断層を震源とする地震は数千年に一回とされ、道内では一八三四年に石狩地方で記録が残る程度だ。

しかし、原発問題に詳しい北大大学院工学研究科の大友詔雄助手(原子物理学)は、活断層の危険性について「地震国の日本はあらゆる原発に当てはまる」と訴える。また、国の耐震設計審査指針についても「二十年以上前につくられ、阪神大震災以降の構造設計の見直しが反映されていない。泊原発を含め、判決は既存の国内原発の耐震性を根本的に問うもの」と指摘している。
(北海道新聞 2006年3月24日付)



我が国の資源・エネルギー事情を鑑みれば,原子力発電そのものは必要不可欠であると私は思う。

原子力は使い方を誤るとチェルノブイリやスリーマイルの事故に見るように取り返しのつかないことになるという危険性をはらんでいる。

また日本に住んでいる限り地震という自然現象から逃れることはほぼ不可能だ。

金沢地裁の判決では,特に耐震性という部分で極めて重要な問題が指摘されている。

原子力に対する過剰な拒否反応を差し引いても,国や関係機関は原子力発電所やその関連施設の地震対策について検証し国民に説明する義務がある。問題点があれば抜本的に改善しなければならない。

北陸電力の控訴は当然だが,以後の裁判では,施設の強度を含めた地震対策について,十分な検証データとともに論じていただきたい。

私はこの問題を今後も注視していこうと思う。





原発差し止め判決の要旨 金沢地裁

金沢地裁が24日、志賀原発の運転差し止め請求を認めた判決の要旨は次の通り。

【請求の根拠】個人の生命、身体および健康が現に侵害されている場合、または侵害される具体的な危険がある場合には、その個人は人格権に基づき侵害行為の差し止めを求めることができる。原告らは「環境権」も主張するが、このような権利ないし利益が実体法上、独立の請求根拠となり得るとは解しがたい。

【立証責任】原告らが、原子炉の運転により許容限度を超える放射線を被ばくする具体的可能性があることを相当程度立証した場合において、被告が具体的根拠を示し、かつ必要な資料を提出して反証を尽くさないときは、具体的危険の存在を推認すべきだ。原子力安全委員会の安全審査を経ているからといって原子炉施設の安全設計の妥当性に欠ける点がないと即断すべきものではなく、問題点ごとに、どこまでの事項が審査されたのかを個別具体的に検討して判断すべきだ。

【過去の事故例】スリーマイルアイランド原発事故やチェルノブイリ原発事故が生じたからといって、本件原子炉で同様の事故が発生する具体的可能性があるとはいえない。わが国の原子力発電所において、多数の異常事象が生じているからといって、直ちに本件原子炉施設に、周辺住民が許容限度を超える放射線を被ばくする放射性物質の放出をもたらすような事故が発生する具体的可能性があるとは言えない。

【構造などの危険性】

インターナルポンプを採用したことによる金属片の発生、流入の危険や、非常用炉心冷却装置が縮小されたことなどによって事故が発生する具体的可能性についての立証が不十分だ。ボイド効果の逆転や多重防護の考え方自体の無効性などについても原告らの主張は抽象的過ぎる。

被告はプルサーマルを実施するかどうかをまだ決めていないので、プルサーマルが原因で原告らの人格権が侵害される具体的危険があるとは言えない。原告らとしては、被告がプルサーマルを実施すると決めた段階でその危険性を理由とする原子炉の運転差し止め請求をすれば足りる。

【地震、耐震設計の不備】

原子炉施設の耐震設計が妥当であると言うには、震源断層に対応する地表地震断層をもれなく把握し、直下地震の想定が妥当で、松田式、金井式と大崎スペクトルを理論的支柱とする基準地震動の想定手法(大崎の方法)に妥当性があることが前提となる。

大規模な陸のプレート内地震でも、発生前には震央付近に活断層の存在が指摘されていなかったり、地表地震断層が確認されなかったとされる例が2000年の鳥取県西部地震のほか相当数存在する。

被告の綿密な調査で活断層が見つからなかったといって原子炉の直下にマグニチュード(M)6・5を超える震源断層が存在しないと断ずる合理的な根拠があるとは認めがたい。

政府地震調査研究推進本部が公表した報告「邑知潟断層帯の長期評価について」は、同断層帯が将来的にも全体が一つの区間として活動すると推定し、地震の規模はM7・6程度とした。この評価内容に不備があるとは認められない。耐震設計審査指針に従えば、同断層帯による地震は基準地震動S2として考慮すべき地震である。

地表地震断層の長さから松田式を用いて地震の規模を限定するのは、想定される地震の規模を小さく予測する危険がある。マグニチュードと震源距離から岩盤上での地震動を想定する金井式は、一定範囲については妥当な結論が得られる可能性が高いが、適用限界を慎重に見定めるべきだ。発生源を点としてとらえる点でも限界がある。

解放基盤表面の速度応答スペクトルを表した大崎スペクトルは、それを超える応答速度が生じないものではないし、データが限られていることの限界がある。妥当性は大崎の方法で得られた結果と実際の観測結果との整合性にかかっている。

1995年の兵庫県南部地震の観測結果は、基準地震動が現実より過小ではないかとの疑問を生じさせた。2005年の宮城県沖地震の際、女川原発の敷地で観測された加速度は1897年の仙台沖地震から想定した結果を上回った。またこの加速度はS2による設計用応答スペクトルの値を上回った部分がある。大崎の方法は実際の観測結果と整合しておらず、妥当性は認め難い。

本件原子炉敷地に、想定したS1、S2を超える地震動を生じさせる地震が発生する具体的可能性があるというべきだ。その場合に、構築した多重防護が有効に機能するとは考えられない。

原告らは周辺住民が許容限度を超える放射線被ばくの具体的可能性があることを相当程度立証したが、被告の反証は成功しておらず、周辺住民に具体的危険があることを推認すべきだ。原子炉増設の原子力安全委員会の安全審査結果はその後の重要な事象(鳥取県西部地震、宮城県沖地震など)を前提としておらず、判断を左右しない。

原子炉の運転が差し止められても少なくとも短期的には電力供給に特段の支障になるとは認め難く、想定を超える地震による事故で許容限度を超える放射性物質が放出された場合、周辺住民の生命、身体、健康に与える悪影響は極めて深刻。人格権侵害の具体的危険は受忍限度を超えている。

重大事故発生の影響は極めて広範囲に及ぶ可能性があり、最悪の事故を想定した場合は、最も遠方の熊本県に居住する原告にも許容限度である年間1ミリシーベルトをはるかに超える被ばくの恐れがある。すべての原告に具体的危険が認められる。全員の請求をいずれも許容するべきだ。
(中国新聞 2006年3月24日付)

posted by ippei_kagurazaka at 00:09| Comment(0) | TrackBack(1) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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